- shao夫の中国ガソリン事情
- みなさま。
- ・買ったばかりの新車がディーラーから2Kmも走ることなく、ガス欠で道路の真ん中に立ち往生したことありますか?
- ・ガソリンを車にペットボトルで入れたことありますか?
- ・ハイオクとレギュラーを混ぜて激走したことありますか?
- 一時期、テレビのニュースで中国のガソリン不足が取り沙汰されていましたよね。ガソリンスタンド(以下GS)に長蛇の列をつくる車。売り切れだと客にアピールする店員。本当に売り切れなのか?と疑い詰め寄る客。私も、エライ事になっているな~って、のん気に映像を眺めていたひとりです。
- 自分がそれを体で思い知ることになるとはつゆしらず……
- それは、出張先の中国大陸で、ある中国人(Aさん)の新車引き取りにつきあうことになったのがはじまりでした。
- 1.初乗り
- ちょうど翌日から中国の大型連休が始まる日だったので、仕事が長引いたにも関わらず無理をして新車(SUV!)を引き取りに行きました。Aさんは、連休は何が何でも新車でなくては!!と思っていたようです。その気持ちはよく分かります。
- 閉店間際ということもあり、ディーラーさんは帰宅モードですでに真っ暗(-_-;)。でも予め頼んでおいた新車は金銭処理が済めば引渡し可能とのこと。しかし、屋外に照明もついていない(店内の商談コーナーにだけ細々と灯りがつけられていた)状態で、購入する車の外観をチェックすることもできず、これでいいのかな~と私は心配しました。当事者達はど~でもいいみたいでしたが……
- かけつけたAさんの奥様&お嬢ちゃん、会社の男性社員(Bさん)と、計5人で初乗り!です。中国では新車購入はまだまだ一大イベントなんです。しかも日本車のSUVとくれば、そのワクワクぶりは想像を超えるものがあります。
- しかし後々考えると、この時Bさんが合流して男が3人いて本当に良かった、と実感することになるのです……
- 2.まさか……ガス欠?
- Aさんの以前の車はディーゼル車のオンボロで、乗せてもらって言うのもなんですが、ストレスを感じる車でした。発進、減速、右折左折、すべての動作でギッコンバッタン。ドライバーの腕というよりも、古さが原因のようでした。
- それに比べて新車は信じられないくらい快適で動きもスムーズ!技術の進歩は素晴らしいデ~ス。まず、Aさんがディーラー店員に教えてもらっていた一番近いGSを目指しました。この時点で私は『明日から連休が始まるから、今日の内にガソリンを満タンにしておいた方が無難なんだろう』程度の思いでいました。
- しばらくして信号もないのに人々の横断の激しい地点があり、一旦停止させられました。人の流れが途切れたところで、さあ再発進と思っていたら……車からエンジンの音が聞こえなくなってしまったのです!ランプ計器類は付いているのですが、キーを再度回し込んでも“ウンともスンとも”言いません。ディーラーからここまでの距離、1Kmに達するかどうかというところ。
- ……ガス欠でした。
- 唖然とする我々を尻目にAさんは予想できる原因を挙げていきました。
- i. SUV製造元でガソリンを僅かしか入れずに出荷した。
- ii. 製造元ではガソリンをちゃんと入れて納品したが、受取ったディーラーがガソリンを抜いて(自分達のモノにして)お客に引き渡した。
- このSUVが日本メーカー製であったことから日本人の国民性も考慮してi.はあり得ないのでii.が原因に違いない、最初のGSまでたどりつく程度にガソリンを“抜いた”ものの、そこまでさえ行き着かなかったのだ、というのがAさんの推論です。……さて、本当にガソリンを掠め取ったのは誰なんでしょう?それにしても、最初からガソリンが少ないことが分かっていたから、GS目指してまっしぐらだったのね(-_-;)
- ただ、その場に居た私も含めたメンバー全員、怒りやショックは思った程なかったのです。だって『ここは中国。何が起こってもおかしくない』。そう思うと頭を切り替えられるんです。許す・許せないというよりも、この後、車と自分たちの身を守る為にどうするか?を必死に考えるのです。男性3人はさっさと仕事にかかりました。Bさんはディーラーが教えてくれた場所に“本当に”GSがあるかを確認しに行き、わたしは車を後部から手押し、Aさんは車を側面から押しながら同時にハンドルを操作して、ゆっくりと車を進め始めました。誰が指示した訳でもないのですが。奥様だけは「ディーラーに電話して対応して貰ったら?」と主張されていましたが……対応してくれると思います?
- 幸いディーラーの言うとおりの場所にGSがあると目確認したBさんが戻ってきて、男3人で1Kmは無かったと思いますが800mくらい車を手押ししたような気がします。重いゾ、SUV!!正直、『どうして乗用車じゃないの』って恨みました。大きな交差点を手押しで渡るのはドキドキでした。GSへの入場は上り坂で、最後にきてこれは本当にキツイ!ついには坂の途中で一度止まってしまって、もう一度動かすのがこれまた大変。ガソリン注入機の前まで押しきった瞬間は、達成感でいっぱいでした。大陸の暗い夜空に輝く月はきれいじゃった……。
- 3.ガソリン没有
- やっとの思いで到着したガソリンスタンドで、Aさんが店員と話をする言葉が私にも聞こえてきました。 「没有油了」……こんな時、中国語が少しでも聞いてわかるのは損だナーと思いました……。
- 店員はぶっきらぼうに「没有油了」を連呼していました。取り付く島が無いってこのこと。私は自分なりに「没有油了」を解釈してみました。
- I. 正直、ガソリンは少し残っているけれど“ワイロ”でも渡さない限り譲ってやんないよ。
- II. 本当にガソリンは一滴も無い
- ii.の場合、新車をこのGSに放置してタクシー等で帰宅しなければなりません。盗難等の相次ぐこの街(中国都市部でもガラが悪い方)では考えられない選択なので、後味は悪いにせよi.で事が収まることを祈りました。
- しかし「この車はガス欠で、ここでガソリンを入れないと他へ移動できないョ」「本当は少しガソリンを残しているだろうから、なんとか少し分けてョ」等、どんなに説得しても店員は応じる気配を見せず、一滴も売ってくれません。我々が必死に交渉している後ろから、どんどんガソリンを求める車が入ってきます。それら一台一台に「没有油了」を連呼して、店員さんも大変ダ。みんな本当に自分達の同胞を信じていないのか「本当にガソリンは無いのか」「本当は少しだけ持っているだろう」と店員に食い下がっていました。中には無理矢理ノズルを車のガソリン注入口に入れて発射する強者もいましたが、「スコッ、シュコッ」という哀れな音が響くばかり。
- そんな絶望的な光景を眺めていると、いつの間にか現場から消えていたBさんから電話がかかってきて「他のGSをみつけた、ガソリンをタンクで買って行くよ!」。
- いったいどこにGSが?!と見回すと、私たちがいるGSの対面に“同じ石油会社”のGSがありました。片道4車線、中央分離帯もある大きな道路に隔たれていたことと、とにかくそのGSが暗かったので、ちっとも気付きませんでした。
- ”タンク購入”したって、いったいどんなサイズのタンクを持ってくるんだろうと心配していると18リットルの比較的小さめのタンクでした。中国なだけにドラム缶を想像していた私は考え過ぎでした(笑)
- 4.ガソリン注入
- さて(^o^)。 「没有油了」と言われ悲嘆に暮れている他のドライバーを尻目に、ガソリンを手に入れた我々は悠々とガソリン注入の準備に取り掛かりました。これで、動く!
- タンクから車のガソリン注入口へは直接入れられそうにないので、まずは“手もみポンプ”を貸して貰えないかGS店員へお願いしてみました。このGSでガソリンを買ってあげることはできませんでしたが、ポンプくらい貸してくれてもいいでしょう?
- 答えはとってもそっけなく「没有」。そんな殺生ナ。ここでも中国人を信じられない私達(いっときますが日本人は私だけで後はみんな同じ中国人です)はGS内を勝手に探し回りましたョ。店内の奥から、トイレの中まで。
- でも、本当に無かった。疑ってごめんね。
- 仕方が無いので、ガソリン注入の補助をしてくれるスロート代わりになる材料を探すことにしました。あった!じゃ~ん。道端に捨ててあったペットボトルでーす。底を切って、飲み口部をガソリン注入口に差し込めば、立派なスロートです。ペットボトルを切るハサミは流石にGSで貸してくれました。
- ようやくガソリンを入れることまでこぎ着けましたが、意外と難しいんですョ。注入口の入り口付近に弁があって、ある程度の力で弁を下に押し込まないと開かないようになっているのです。安全対策ですね、素晴らしい。でも、だからこそ、手作業では簡単にガソリンは入れられないのです。ひとりが針金等でこの弁を開いておき、もうひとりがペットボトルを支え、最後のひとりがタンクを傾けて“ゆっくり”入れていく必要がありました。具合の悪いことに、ペットボトルの口径と長さでは閉じている弁を“押し開きながら”ガソリンを注ぐことができなかったので大変でした。18リットル入れ終わるのに、男3人がかりで油まみれ。残っていた体力をすべて使い切りました_| ̄|○
- 5.ガソリン混入
- 危機を脱して再び走り出したSUVで、Bさんが見つけた対面のGSへ行くことにしました。連休も始まるし、やっぱり満タンにしておきたいというAさんの気持ちはよく分かります。私でもそうしたでしょう。たとえ私たちは疲れ切っていて、夕飯も食べてなくて、夜の10時をまわっていたとしてもネ(-_-;)
- しかしそのGSでは車が列を成してガソリン待ちをしていました。テレビで見た、車が外の公道にまで続いて列を作っている光景を目の前にし、ちょっと感激。でもそこは諦めて、もう少しすんなり入れるGSを探して車を走らせたのです。だって、時間をかけて並んだ挙句に“没有油了”って宣告されたら、どこに怒りを爆発させましょう?
- 意外にも、5分と走らず別のGSを見つけることができました。と言っても、そこでも5台ほど待ちましたが……まあ、妥協です。
- しかーし!私の目に飛び込んできたのは“97(ハイオク) 没有了”の立て札。買ったばかりのこのSUVは絶対にハイオク仕様だし、さっきタンク購入したのもハイオクだと言っていたし。このGSで入れられるガソリンは“92(レギュラー)”。レギュラーはまずいよ~って、頭の中で勝手にパニックになっていました。大学時代の専攻は化学だったので『ハイオクとレギュラーの違いはオクタン価の違いだよな?化学式が違ったら燃焼されたあとの生成物も異なった物になるだろうし、それらが混ざり合うって良いのかな?悪いよな??』
- ……言ってあげるべきか否か。
- Aさんが私の方を向いて「ハイオクとレギュラー混ぜると何か問題ありますか?」
- 聞いてくれてありがとう!Aさん。「オクタン価が違うので良くないですョきっと!」と答えてあげることができました。言えたョ、中国語で!でもよく意味がわかんね~。説得力もね~。自分でもビックリ。
- やはりAさんは「まっ、きっと問題ないでしょう!」とあっさり私の意見を却下。 『やっぱりそうだョネ、これが中国だョネ』。私の心に空しい風が吹きました。
- 「念のためGSの店員に聞いてみましょう」とAさん。GS店員の答えなんて分かりきっていたのですが「没有問題」でした。顧客の車のこと考えているのか?このヤロー。日本人を全否定された気がして(しかも多分問題無いのだろうし)悲しい。
- とうとう順番が回ってきて、購入して3時間も経っていないSUVにレギュラーが注入されることになりました。あぁぁぁぁ入っていく!50数リットル入るタンクに、ハイオクは18リットル弱しか入れていないので、満タンにするとレギュラーの割合が多いのです……汚された気分ですョ。僕の愛車だったら、有り得ない!!
- ふっと横を見ると、トヨタのランクルが!へェ~中国でも走っているんだ~と一瞬感動して、直後に落とされました。彼らも平然と“レギュラー”入れてました_| ̄|○
- 中国進出を目指す日本の製造業のみなさま、彼の地ではオーバースペックは不要。動きゃOKです。スペック打ち合わせに時間を割くのは止しませんか?
- かくしてめでたく?満タンになった新車を飛ばして、Aさんの故郷である東北地方の郷土料理レストランに行きました。11時を過ぎていましたが、うまかった~。そしてなぜか“純生”というラベルが貼ってある中国の瓶ビール。うまかった~~。疲れた心身に染み渡る味でした。
- さて、大変長くなりましたが、今や台湾では稀になった光景や考え方を久しぶりに体験できたので思わず書いてみました。中国本土駐在の方々にとって彼らの行動パターンは“ごく普通”かもしれませんが、わたしたちにとっては新鮮そのもの。
- ただ、驚いたことも多いのですが彼らの行動パターンは非常に“合理的”で、決して間違ってはいないョナと思える様になってしまった自分が居ることに気付きました。世界は広くて、日本的で無い方が常識であることが多々あります。日本は非常識の集まりなのかもしれませんネ。
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